M.I.E.会員や黎明塾会員のメンバーの中でも、これからは国際的な視点でのビジネスを行っていく方も多いのですが、これだけは頭に置いておいて欲しいということはございますか?
----木全
そうですね、やはり国によって生まれ育ってきた背景や文化が違います。日本人と同じことをしないからと言って、「けしからん」と考えているだけでは、何も先に進みません。ですから、相手の環境や文化も理解した上で、交渉をしたりコミュニケーションを取って、ビジネスを行っていくことを忘れないでいて欲しいと思います。
でも、なかなかすべてを理解するのは大変ですよね。
----木全
先ほども申し上げましたが、失敗をしてでも学んでいけば、きっと相手のことがわかるようになってくると思います。私がイランで知った言葉に、ビジネスにおける3つの『あ』、という言葉があります。ひとつは“あせらず”、次に“あてにせず”、そして“あきらめず”ということです。
“あてにせず”というのが中東らしいと言えば、中東らしいのですが……(笑)。
確かに現代のビジネスにはスピードが非常に重要な要素ではあるのですが、その対処も含めてさまざまな計画を考えておくことです。国際ビジネスの面では少しゆとりを持って臨む姿勢も心の中には持っておいた方がよいと思います。
それは大切なことですね。
----木全
また、逆に日本人には日本人の良いところがたくさんあります。国際ビジネスだからといって、すべてを相手に合わせればいいわけではありません。人として誠実に接し、そして自分の意見を明確に主張して議論をしていけば、日本人の良さもきっと相手に伝わるはずです。だから考える基準をすべてその国に合わせてしまうことには、私は反対です。
確かにその通りだと思います。
現在は関西日本香港協会会長を務められていらっしゃいますが、そこでの目標はございますか?
----木全
これまでの関西日本香港協会は個人会員の方が多かったのですが、今後は法人会員にも増やしていって、香港と日本のビジネスを繋ぐような活動を積極的に行っていきたいと考えています。
それはよいお考えだと思います。
香港と日本の間の経済と文化の交流を促進するのが関西日本香港協会です。香港とのビジネスで具体的に何かを行っていきたいと考えていらっしゃる企業や団体の役に立つような動きを活発にしていきたいですね。
では、最後になりますがこのインタビューをご覧いただいている若手経営者たちにメッセージをお願い致します。
----木全
最近の日本のビジネスシーンにおいては、よくグローバリゼーションとよく言われます。バブルが崩壊して、それまでの日本的な考えでの企業経営が維持できなくなり、グローバルな基準に合わせないと日本が生き残っていけない、というような話ですが、このグローバルスタンダードとは、一体何でしょうか? それは一般的には、アメリカ流の経営やヨーロッパ流の経営のことを指していると思います。
ただ、アメリカやヨーロッパのスタイルに単純に合わせれば、日本が世界と対等にビジネスができるのか?と言えば、私はそうは思いません。私は、日本には日本の良さや伝統がある、と確信しています。その日本の良さ、日本的な精神を生かしながら経営して欲しいと願います。
武士道、儒教精神、石門心学など、日本にしかない素晴らしい考え方があります。和の精神、協調の精神、話し合いで解決する姿勢、勤勉であること、信用を大事にすること、誠実であること、倹約の精神、改善をする創造的な心など、世界に誇る日本の良さはたくさんあります。
そんな日本らしさ、日本の良さを、世界のどこへ行っても忘れず、自分の中にしっかりと持っていることを心がけてください。なおかつ、その国やその土地土地の文化や習慣もよく理解して、双方をマッチングさせながら仕事をすることが、グローバルなビジネスにおいての基本であり、一番大切なことであると、私は考えます。
本日は誠にありがとうございました。
(2009年6月24日取材) |