今回のM.I.Eビジネスサイト・トップリーダーインタビューは、住友電気工業株式会社で長年にわたって国際ビジネスの第一線でご活躍なされ、海外とのビジネスのエキスパートであり、現在は関西日本香港協会会長をお務めになられている木全さんにお話をお伺いします。
木全さんといえば国際ビジネスというイメージがあるのですが、学生時代から海外を相手にした仕事やビジネスを目指されていたのですか?
----木全
いえ、そんなことはないんですよ。会社に入って数年後にある日突然、海外に行ってこいと言われたことがきっかけです
そうなんですか?
----木全
あまり自慢して言えるようなことはないのですが、会社を選んだのもたまたまのような話ですからね(笑)。会社説明会でいくつか話を聞きにいったんですが、その中で住友電工の当時の人事部長だった亀井さんの話が非常に良かったんです。住友電工という会社のことはほとんど知らなかったのですが……。
その方に惹かれて会社を決めたようなものなのですね。
----木全
行き当たりばったりなんですよ(笑)。でも亀井さんの話には非常に感銘を受けて、この会社なら一生を託すことができると思ったことは覚えています。
最初の海外赴任では、どのようなお仕事なされていたのですか?
----木全
送電線工事の施工管理ですが、私は技術屋ではないので、事務管理や予算管理をする担当でした。事務所長的な立場ですね。海外のプロジェクトというのは予算も大きいので、その管理はかなり大変です。私が行く以前のプロジェクトでは、事務的な担当がいなかったこともあり、予算管理や工程管理がスムーズにいかなかった面があるのですが、そのような面を中心に私が担当をすることになりました。在任中に金額で3倍ほどの大型案件が受注できて、それにはプロジェクトの全責任を負うプロジェクトマネージャーの仕事をしました。
イランに赴任されたとお聞きしていますが、当時は大変な時期だったのでは?
----木全
二つ目のプロジェクトを施行中にホメイニのイラン革命がありましたし、アメリカ大使館占拠事件やイラン・イラク戦争も勃発しました。工事はストップして経費だけがかさんでしまうような時期もあって、本当に大変は大変でした。でも、そこで逃げて工事を中止してしまうとすごい損失が出てしまいますから、なんとか最後までプロジェクトをやり遂げましたよ。
その後は国際ビジネスの分野を中心に活躍されたのですね。
----木全
海外赴任から戻ってくると、元自分の居た経理部には席がなくなり、工事関連の部署になってましたね(笑)。それからは海外プロジェクト関連、海外事業部、ニューヨーク法人、東京などで、国際的なビジネスに関わってきました。
さまざまな海外プロジェクトや国際ビジネスを成功に導いてこられた木全さんにズバリ教えていただきたいのですが、国際ビジネスを成功に導く秘訣は何でしょうか?
----木全
ビジネスとして考えると、海外での大きなプロジェクトでは、契約した装置をいかに納期通りに納めるか、ということが一番重要なポイントです。少しの遅れが大きな損失につながってしまいます。ですから、現地での交渉、日本との調整など、あらゆる面でコミュニケーションが大切だと考えます。私が初めてイランに海外赴任した当時は、暗号のようなテレックスしかない時代でしたし、日本とイランでは電話もつながりにくかった。それを思うとインターネットが発達し、FAXやメールですぐに連絡ができる現在は、天国のような環境ですね(笑)。
ただ、技術的な問題だけではなく、その国その国の考え方や文化を失敗しながらでも身につけて、お互いの立場を理解した上で、こちらの意図を伝え、相手の考えもしっかりと聞くことが計画通りにビジネスを進めるポイントになります。そうした理解に基づいた上で、約束を守ってビジネスをすることが何よりも大切なことで、そうしなければ成功はないと思います。
木全さんの仰る通りだと思います。 |