お客様に教えられたことはありますか?
----栗山
お客様からは数多くのことを学びました。、印象に残っている方、尊敬している方もたくさんいます。どの話をしていいのか迷いますが、ひとつだけ若い頃の話をさせていただきましょうか。私が3年目の時に融資課で担当していた靴屋さんの親父さんの話です。その方からは個人商店の商売の流れ、お金や手形の流れ、いろんなことを教えていただきました。そして私の転勤が決まった時、餞別に靴をプレゼントしてくださったんです。これが履いてみるとサイズがピッタリ。私の足のサイズを測ったり、聞いたりしたことは一度もないんですよ。本当のプロの仕事というのは、こういうものなんだなぁと感じました。感謝されたことの嬉しさとともに、仕事の本質を教えられた気がして、今でもよく覚えています。
確かにすごいことですね。
----栗山
毎月持ってこられる手形が金額が少なくなったり、1ヶ月とんだりすると気になってどうされましたかとお聞きしたりしていたことが親父さんもわかってくれていたんだと嬉しくなりましたし、また一方、さすがプロだな、いつ私の足を見ていたのだろうと感心しました。この経験が、私がその後「マーケット・イン」(お客様の立場でお客様の目で見る)と言っていることに、つながっているのではないかと思います。
では、影響を受けた上司の方はいらっしゃいますか?
----栗山
これもたくさんいらっしゃるので、ひとりを挙げるのは難しいのですが、人事部の時代に退職人数の読みを誤って、大幅に新人を採り過ぎてしまったことがありました。その時、当時の上司が「やってしまったことは仕方がない。これからどうするかを考えることだ。皆がしっかり働いて時間外なしで早く帰れる仕組みなどで補える方向性を考えてみてはどうか」と言われました。そこで学んだのは、組織では間違ってしまってもそのことを声に出すことが大切だと言うことです。気がつくことができれば、助けることができるからです。それが組織のいいところです。ですから経営者の方々は、そういう考え方を従業員の方々に浸透させるのことも重要なのではないかと思います。
本当にそうですね。最後に部下から学んだことは?
----栗山
またこれもたくさんあって困りますね。そうですね、ひとつ挙げるとすれば、支店長時代に支店のみんなでスキーに行った時のことです。学生時代に数回行っただけの私はほとんど滑られない。そんな私にスキーの上手な若い部下が教えてくれたんです。その子は何度も同じことを教えてくれる。嫌な顔をせず教えてくれる。また私が失敗すれば、同じことをちゃんと説明してくれる。その姿を目にして、「自分は職場でこの子にそんなに丁寧な指導をしていただろうか?」と考えさせられました。自分も部下を指導していく時に、彼のような姿勢で臨まなければならないと思いましたね。
それに気がつくだけでもすごいですよ。
いろいろなエピソードを交えて、栗山さんのビジネス観を伺ってまいりしましたが、ここからは若手経営者に向けてのアドバイスと、栗山さんのこれからの目標をお聞きしたいと思います。まず、若手経営者にどのようにビジネスに向かっていって欲しいかのメッセージをお願いします。
----栗山
そうですね、先ほどお話ししたように、自分で納得できることを思いきりやることが大事だ、ということをお伝えしたいですね。まぁ、日頃全力投球していらっしゃる経営者の方ならそのようなことは私から言われなくてもわかっているとは思いますが……。私の好きな言葉に、“相田みつを”さんの『一生勉強一生青春、一生感動一生青春』 という言葉があるのですが、その場その場で挑戦することが自分を成長させていくことができるということですね。同時に、則天去私で正々堂々と何事にも立ち向かっていけば、きっと道は開けるでしょう。企業経営でもそのように考えて日々取り組んでいくことが大切なのではないでしょうか。
確かにそうですね。
----栗山
私は人を採用する時に、目が輝いている人、自分でエンジンを持っている人を採用しなさいと言ってきました。好奇心が旺盛で自分の頭で考えられる人は、必ず伸びるからです。今、世の中を見ていて、自分の頭でしっかり考えて、納得して、自主自立して進んでいく気持ちが忘れられているのではないか、と感じるのです。自分で起業する方はそのようなことはできている方だとは思うのですが、真似ごとをしていたり、流されたりしていてはよくないと思います。
では、最後に栗山さんの今後の目標をお聞かせください。
----栗山
40数年、会社での仕事に精力を傾けて、突っ走ってきました。思い切り燃焼させて貰いましたが、そろそろそれは終わりですかね(笑)。これからは、皆様のような若くて情熱のある方と「わいがや」をやり乍ら、経営や教育問題や地域社会のことを議論し少しでもお役に立てるような活動をしていきたいと思っています。しっかり自分の足で進んでいけるような人を育てられるような環境を地域レベルでも考えていかないといけないと思っています。
本日は大変お忙しいところ、誠にありがとうございました。
(2008年5月8日取材)
|