このインタビューは次代を担う若手経営者の方に向けてのものですが、これからの経営に関してやビジネス面でアドバイスはございますか?
----水野
現在はグローバルで複雑な環境になって、なかなか次はコレだ!というものを見つけることが難しい時代になっています。これからの経営者というのは、『次に、何が、どんなものが、世の中に受け入れられるか』、ということをコンセプトとしてしっかりとしていないといけない。それを私は『構想力』と呼んでいます。そういう力を持った経営者が、信念を持った決断をしてリーダーシップを発揮していくことが、ビジネスを発展させていくポイントなのではないかと思います。
松下幸之助さんにはその「構想力」があったということでしょうか?
----水野
先程、少しお話ししましたが、かつての『キャッチ・アップ・プロセス』では、いいものを作れば売れるという、わかりやすいビジネスモデルがあり、今とは時代が違うので一概には言えない面があると思いますが、ただ、松下電器という会社についていえば、あまりにも松下幸之助という人が大きすぎて、その存在の偉大さが呪縛となってしまって、身軽な動きが取れなかったことがあると思います。それが、最近、中村君(中村邦夫、現松下電器社長)になって呪縛を乗り越えつつあるな、と感じているところですよ(笑)。やはり、その時代に合った経営というものがあるでしょうからね。ただ、もし今、松下幸之助が生きていれば、このような時代にどんな経営をするのか、見てみたい気はします。
では最後になりますが、これからを担う20代・30代の若手経営者にメッセージをお願い致します。
----水野
私が一番大切だと思うことは、好きなことをやりなさい!ということです。好きじゃないことは長続きしない。おそらく好きな道に入っているとは思いますけど、迷った時は本当の好きな道へいきなさいと助言したいですね。好きな道でないと、心がついてこない。好きなことが、時代の流れに沿っていればベストですし、そうありたいものですが、仮にそうではなかったとしても、好きなことを見つけたら、まっしぐらにやることですね。あまり格好つけてはいけません。
私の最も尊敬する人の一人は松下幸之助ですが、彼は決して天才だったわけではないのです。学校もまともに出ていない、家がお金持ちだったわけでもない、しかも身体もあまり強い方ではなかった。そういう中にあって、それらの弱点を跳ね返しながら、自らの人生を切り拓いてきたんです。悪条件の元に育った浪速の一少年が、やる気になればあれだけのことができるということを世に示したことが、本当に素晴らしいことなのではないかと思うんですよ。彼は本当にビジネスが好きだった。そう考えると我々は大変恵まれた状況にある。私は起業家の皆さんが大きく育つことを望んでいます。自分の人生で好きなことをしっかりと見つけ、第2、第3の松下幸之助が出てくることで、日本はどんどん元気になっていくと思います。皆さん、ひとつ、よろしくご健闘をお願い致します。
どうも、ありがとうございました。
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