日本のビジネスを牽引するトップリーダーの方々にお話をお伺いするインタビューの第2回は、松下電器産業株式会社で世界に名立たる商品を開発・販売し、ワールドワイドにご活躍なさってこられた仲井さんにご登場いただきます。まずは松下に入社されたきっかけなどからお聞かせいただけますか?
----仲井
兵庫県の三木市で生まれ、大学は同志社大学の工学部電気学科へ進学しました。松下に入社するきっかけとなったのは、学外実習先として行ったことが縁でした。電気化学の内藤先生という先生が「この会社は将来見込みがある」と勧めてくださったんです。先生は松下幸之助さんのこともよく知っていらしたようで、その人柄も含めて私に推してくれたんじゃないかと思います。それと就職浪人をしたくなかったですから、実習中に新入社員を募集していると聞いて滑り止め的な気持ちもあって受けたんです。第一志望は電力会社、第二志望は電鉄会社、第三志望が大手電機メーカーでした。実は、その電機メーカーの中に松下は入っていなかったんですけどね(笑)。でも今思うと、松下に入って運が良かったと思います。
運ですか?
----仲井
今の年齢になって非常に感じることでもあるんですが、運というよりは、運命と言った方が正しいでしょうかね。まずは健康に産んでくれた親に感謝をしています。そして松下という会社に入って、事業部長になり、役員になって頑張って来られたのも運命の連続だと思っています。もちろん他力本願な運としてだけではなく、自分が努力してきたという自負もありますが、様々な人と出会い、いい商品を作って、世界的に大ヒットするモノを産み出せたことには、強く運命を感じます。忙しかったけれども頑張っていた時代、30〜40代のことは、何より懐かしく思い起こされますね。そして、松下幸之助という素晴らしい経営者の下で仕事ができたことは、本当に幸運でした。いい仕事をしてもらうために大切なのは、その人が何をしたいか、何ができるかによって、適切な場を作ってたり、足りないことを勉強する機会を作ってあげることだと思います。
松下幸之助さんとも直接接していらっしゃり、学ばれたことも多いと思います。仲井さんが一番心に残っているポイントはどのようなところでしょうか?
----仲井
いろいろなことを学ばせていただいたので、ひとつというのは難しいですが、若手起業家に向けてという面でいえば、社長というのは人間を幸せにする心を持たないといけない、ということです。幸せをつかもうと個人個人が努力することは大切ですが、上に立つ人間は、会社でいえば社長ですね、社員に幸せを与えなければいけない。リストラなどはしてはいけいないことだと思います。人間は部品のように考えられてはいけない存在なんです。経営は車の運転と同じで、平坦な直線の道もあれば、山道や崖のようなところを進まなければいけない時もあります。アクセルを踏んだり、ブレーキをかけたりするのが経営の要点。金、金、金と突っ走るのではなく、人、人、人でないといけない。人を育てて、儲けることを考えないと成長はできません。それと社会とともに歩むこと、社会との調和があってこそ、会社というのは良くなっていくと思います。社員に幸せを与え、社員が惚れる会社を作り、その社員と会社を大事に育てていけば会社が大きくなり、より多くの人を雇用することができて社会的に貢献できる。企業は社会の公器なんです。ビジネスから少し話は離れますが、先日お亡くなりになったヨハネ・パウロ2世はすごいですよね。お葬式に200万人もの人が集まるんですから。4半世紀渡って世界平和を訴え、実践してこられました。松下幸之助イズムも根本は一緒。いい商品を世に出して人を幸せにすること、いい企業を作って社員を幸せにすること、そして引いては世界中の人々が幸せになること、全世界の平和を願っているんです。
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