----本日はお時間を頂き、ありがとうございます。まず、谷井さんの生い立ちを簡単にお聞かせください。
私は大阪市西区で紳士服販売の店をしている家に生まれ、環状線の内側、べたべたな大阪の商人の街で育ちました。小さな頃から父親には、いつか自分で何かやれよ、ということを言われていました。長男でしたし、今思うとそれが店を継げということだったとは思うんですが……。
----経営者になられたのは、そのお父様の影響ということですか?
父親から教えられたことはたくさんありますが、一番教えられたことは道徳観です。商売の道徳観、人間としての道徳観です。まずそれが私のビジネスの大前提になっていると思います。
----大切なことですよね。それで小さな頃からの思いを実現されたわけですね。
何の根拠もないんですが、子供心に大きな会社を作りたいと思っていたのは事実です。日本で一番大きな会社の社長になるんや、なんてことを(笑)。
私は、自分でできないことはないと思ってやっていくタイプなんです。最初から無理だとか、やってもいないのにできないとは考えないようにしています。できないとあきらめれば、それまでですよね。できる、できると思い込めば、道は見えてくると思うのです。
----松下幸之助氏のエピソードにもそのようなお話がありますね。失礼ながら、30代半ばでその粋に達していらっしゃるのが、さすがだと思います。
いえいえ、私はとてもそんなレベルではないです。
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----確かに「やろうと思うこと」、「できると思うこと」は経営者には必要不可欠だと感じます。
その通りですね。もちろん現実には、できると思っていても乗り越えられないこともありますが……。でも、思い込んでいる人間が世の中一番強いですよね(笑)。潜在意識のレベルまでそれを思うことができれば、きっと実現するのではないか、と考えています。
----具体的に起業をなされようと思った契機は何かあるのですか?
大学生の時に阪神大震災を経験しまして、親しい友人を亡くしました。その時、やりたいと思っていることは早くやらなければいけない、と感じました。それで学生時代から大学生向けのビジネスを始め、その時に初めて電子メールを使って、「これは便利なツールだなぁ」とは感じていました。
----一度NTTに就職なさっていますよね。
ITには興味があったので、当時ITに関わる仕事を一番できそうなところで学びたいと思っていました。実際、いい会社でしたし、面白い仕事もさせてもらっていましたが、自分でプロジェクトを動かしていくには組織の中ではやはり時間がかかることを感じて、自分の道を進もうと思って退職を決意しました。
----お辞めになる際に、起業後のプランは出来ていたんですか?
いえ、後のことは全く何も考えていなくて、しばらくは父親を手伝って洋服を売っていましたよ(笑)。
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