----さまざまなベンチャー企業を知っていらっしゃると思いますが、棚倉さんから見てベンチャーで成功しようと思うなら、何が大切だと思われますか?
それはケース・バイ・ケースで、一概に言うことはできないですね。先ほども申し上げた通り、素晴らしい技術を持っていてもそれだけでは企業として成功はできません。企業の目標が顧客創造だとするならば、やはりマーケティング力とイノベーション力が必要になってきます。ただ、ひとつ言えることは、アメリカのベンチャーと日本のベンチャーを比べてみると、日本の場合、プレゼンテーションの能力が不十分かなあ、ということです。
----日本人は確かにプレゼンテーション下手ですね
アメリカのベンチャーのビジネスプレゼンテーションを聞いていると、中身は大したことなくても(笑)、非常にその気にさせることが上手なんですよ。「これはいけるんじゃないかなぁ?」と。日本の企業のプレゼンを聞いても、なかなかそうは思えないことが多いんです。やはりそのようなプレゼンテーションの能力があるとないとでは大きく違います。もちろん、本来の意味ではビジネスの内容もしっかりしていないといけないと思いますが、まずは興味を持ってもらえるかどうかは、プレゼンテーションによるところは大きいと思います。その能力が高ければ、ビジネスチャンスは確実に増えるはずです。
----訓練が必要なんでしょうか?
訓練によって向上することもあるのでしょうが、私が思うのは、少なくとも相手の立場に立って物事を考えることが大切だ、ということです。自分の会社の説明をなされる時は、当然相手にどんなメリットがあるかをきちんと伝えなければいけない。ただ技術、商品、サービスが素晴らしいことの説明だけでなく、それが相手にどんな役に立つことなのかということですね。それがきちんとできれば、まずは話は聞いてもらえるんじゃないでしょうか? 紹介を受けるなどして会うことが決まったら、まずその会社のことを知ることから始めることです。そして、そこに何を提供できるのか考えて会うようにしなければ、相手にも無駄な時間を使わせてしまうことになります。
----仰る通りですね。
----棚倉さんご自身が、今後目標となさっていることを教えていただけますか?
現在の我々の仕事は、投資した企業がIPOし、投資家にキャピタルゲインを配当することですが、私としては、もっと社会的な意義のあるベンチャーに投資できるようなシステムを作れたらいいなぁ、と考えています。日本でもエコ・ファンドのようなものが少しずつ出てきていますよね。
----環境関連事業への投資ですね。
地球環境を考えた事業と、もうひとつは社会福祉的な事業ですね。単純にこれらの事業で投資利回りを求めるというのは難しいことなので、別のシステムは必要だと思いますが、このような社会的に意義のあることに投資しようという投資家の方も出てきています。そういった方々の受け皿となり、また適切な事業へと投資できることが非常にこれから大切になってくることだと思います。
----それは公共がやるべきことなのでは?
公的機関がどこまで真剣に取り組めるのかは、現実を見ると……。やはり民間レベルでそのような事業をやっていこうとする企業をサポートする方が実現可能な話なんじゃないか、と思います。極端な例で言えば、お金という利益を求めるだけではなく、利益はとんとんでも環境や福祉に大きなメリットのあることには、投資をしていけるような流れができればと個人的には考えています。投資やファンドというとお金ばかりを追い求めるイメージがあると思いますが、そうではなく、投資することにより地球に優しくなる、社会貢献できるというのは、これからは世界的に必要なことだと思います。
----本当にそうなれば素晴らしいですね。
ベンチャー企業も環境問題や福祉に関連されているところは多いですよね。なかなか簡単な話ではないですが、少しでもそんなことに近づいていければいいんじゃないかと思います。
----本日はどうもありがとうございました。
(2008年2月15日取材)
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