----まず、森中さんが起業に至った経緯についてお聞きしたいと思います。元々、独立しようという考えをお持ちだったのでしょうか。
私は豊中駅前の商店街で生まれ育ちました。私が小さい頃の商店街には非常に活気があって、皆さんすごく生き生きと商売をしていました。そんな風景を見て育ったので、子どもの頃から将来は事業というか、自分で何か商売をしたいという考えは持っていましたね。
----商店街で生まれ育った原体験が、今の事業にもつながっていらっしゃるような
気がします。
そうですね。日本は中小企業や個人事業主で成り立っている国なのに、あまりにもそれらの方々が恵まれていない気がしていました。大企業の役員クラスの年収と、中小企業の社長の年収には大きな開きがあるじゃないですか。私には小さな商店のオーナーさんたちが楽しく、一生懸命に、毎日長時間働いているイメージがあるのに、結果として報酬にすごく差が出てしまっている。そこに何かボタンの掛け違えがあるんじゃないかなぁと感じていました。大卒で就職する会社も、何か中小企業の役に立つ仕事をしながら、将来自分でビジネスをするために活かせる能力も身につけたいと考えて、コンサルティング会社を選びました。
----具体的に起業されたきっかけは何だったのですか。
20代のうちには自分でビジネスをしたいと考えていました。特に理由はないんです、感覚的にそう思っただけで。今は20代で独立される方も多いですけど、当時なら20代で独立すると“若くして独立”というようなイメージでしたしね。あと仕事でプラザクリエイトの大島社長のように私より若いのに独立した方とも接したことは刺激になりました。
----最初は花を贈るビジネスでスタートされたんですよね。
はい。「フラワーメッセージ」という会社を立ち上げ、生命保険会社のセールスレディの方々の販売促進を支援するフラワーギフトの代行業務を始めました。顧客のメモリアルデーに花を贈るサービスです。保険の営業ではプレゼントを贈るのは一般的でしたが、贈り漏れたりすることも多かったのを、当社でデータ管理してお届けするようにしました。
----現在はそのフラワーメッセージ事業はやっていらっしゃいませんよね。
起業した時がバブル崩壊の時で最初は順調だったんですけどセールスにかけられる経費削減のあおりで花の贈り物もだんだんと減ってきて、事業内容の変更を迫られました。そんな時、当社の顧客の方々から、面倒な経理の仕事を代行してくれないかという声が多くあったんです。景気が悪くなって無駄な税金は納めたくないけど、日々の伝票を処理するのは大変だということで。それで個人事業主である営業職員が手をわずらわせていた、確定申告の前段階である帳簿の整理・作成をする経理代行をすることにしました。しばらくは花の事業と平行していましたが、ある時点で経理代行ビジネスだけに切り替え、そのサービスを全国規模で事業化しました。
----発想の転換と経営者としての決断ですね。
前の日まで花のラッピングをしていた社員に営業トレーニングをして、経理代行の営業をするなんてこともありましたね(笑)。しばらくは大変でしたよ、顧客は増えてもなかなか採算ベースにまでは届かない。でも顧客がいる限り、簡単にやめる訳にもいかない。私はコンサルティング会社にいる時代からさまざまな企業を見てきて、どんなビジネスでもそんなに簡単には成功しない、起業して成功するのは1割くらいだと感じていました。成功するためには一生懸命に工夫して、成功への扉を開けなければいけないんです。そう考えて、何とかその扉をこじ開けられるように頑張ってきました。
----その頃に社名も変更されました。
花の事業をやめたので、「フラワーメッセージ」ではおかしいだろうということで…。「フラワーメッセージ」のFとMを残して「エフアンドエム」としました。しばらくは財務関係のコンサルティングで「ファイナンス&マネジメント」とこじつけていましたが(笑)、今は何の略でもない「エフアンドエム」です。
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