今回のインンタビューは、“歴史に学び、未来を創る”ことをテーマとしたM.I.E.会員サイトの21世紀型企業家へ向けてのメッセージとしてお話をお聞かせ願いたいのですが、まずは金田様の歴史、ソニーに入社されたきっかけなどをお聞かせいただけますか?
----金田
阪大在学中にインターンシップのような形で、企業実習をする機会がありました。私は金属材料の勉強をしていたので、日本で初めてラジオに使う半導体トランジスタを開発していた東京通信工業(現・ソニー)に興味を持って、実習に行かせてもらったのが直接のきっかけです。当時の東京通信工業はそんなに大きな会社ではなく、今でいうとベンチャー企業のような存在でしたね。
ソニーではどのような仕事に携われたのですか?
----金田
半導体トランジスタの開発からスタートしました。半導体はICへと進化し、現在エレクトロニクスのあらゆる領域に使われています。従って私はさまざまなエレクトロニクスの進歩に引っ張られて歩んできたと言えます。でも、技術系の人間だからといってそれにとらわれないのがソニーという会社で、技術系・事務系に関係なくその人にあった仕事をさせていくんです。私もマーケティングやアフターサービスも担当しました。いい仕事をしてもらうために大切なのは、その人が何をしたいか、何ができるかによって、適切な場を作ってたり、足りないことを勉強する機会を作ってあげることだと思います。
ソニーにはそのような社風があるということですね。
----金田
そうですね。自分のやりたいことを主張するために、自己申告や社内募集制度なども30年以上も前から取り入れられています。また、学歴が重視されないのもソニーの特徴だと思います。盛田さん(故・盛田昭夫氏、元ソニー会長)は、『学歴無用論』という本も出したことがあるくらいですよ。ソニーの新人採用時には「大学卒業者」というカテゴリーはありますが、どこの大学か書くスペースはないんです。でも、学力は必要です。つまり、学歴と学力は違うということです。また、大学の専門で2年ほど、大学院を出たとしてもプラス2年、計4年間の勉強での専門性で、一生自分の仕事やビジネスに通用するわけはありません。仕事は40年近く続けるものですからね。自分に向いていることは何か、何をさらに勉強しなくてはならないのか、を常に考えることが大切だと私も考えています。
盛田さんのお名前が出ましたが、世界的に活躍されたビジネスマン・盛田さんと一緒に仕事をしてこられた金田さんの盛田さん像はどのようなものでしょうか?
----金田
盛田さんは本質を観る力がすごい方でしたね。本質を捉えて感じたことを論理的に説明し、責任を持って自らリーダーとなり、実行していくパワーは素晴らしいですね。わかりやすい単語を使い、自分の言葉で本音で話をするので、外国人の方ともきちんとコミュニケーションができました。本音で話をするから、信頼も厚くなる。ビジネスでも政治でも、本質を捉えて本音で語ることが大切だ、と教えられましたね。そういう人は、内外の人々から大切にされるんです。私はシンガポールではからずも分不相応に授勲を受けましたが、その時、建国の父、リー・クワンユウさんにご挨拶させていただきました。その際、当時盛田さんは病気療養中だったのですが「様子はどうですか?」と非常に心配されていました。世界の政財界のトップから、あれだけ尊敬され、信頼された人は日本ではあまりいないんじゃないでしょうか。
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